・形式
小説、長篇、犯罪
・あらすじ
ライターの「僕」は、ある猟奇殺人事件の被告に面会に行く。彼は二人の女性を殺した罪で死刑判決を受けていた。だが、動機は不可解。事件の関係者も全員どこか歪んでいる。この異様さは何なのか? それは本当に殺人だったのか? 「僕」が真相に辿り着けないのは必然だった。なぜなら、この事件は実は――。話題騒然のベストセラー、遂に文庫化!
・収録話数
全11章
・初出
書き下ろし
・刊行情報
去年の冬、きみと別れ(幻冬舎)
2013年9月
去年の冬、きみと別れ(幻冬舎文庫)
2016年4月15日
・受賞歴、ランキング
2014年本屋大賞第10位
・読了日
2017年6月21日
・読了媒体
去年の冬、きみと別れ (幻冬舎文庫)
初版
・感想メモ
本作は「僕」が書いた文章を編集者が加筆して『小説』として完成させた、という形のメタフィクションノベルである。あとがきの「こういう小説」はポストモダン小説だとも読め(先の11章に括弧がついていたり)、そのため文中の「僕」や「きみ」が誰なのかを丁寧に確認する必要がある。(親切にもp91の「きみは誰だ?」は太字だ)本作は「あなたが作った本が好き」と語る吉本亜希子(J・I、大切なきみ)の復讐のために、木原坂雄大(M・M、あの死刑になるカメラマン)に本という形で真相を知らせる役割を果たす。
仮名なのは、本作がノンフィクションであり(p40、p73)『小説』であるから(p190)だ。オルハン・パムクの「K」やカポーティが『冷血』取材時にレコーダーを使用しなかったことなど「色々仕掛け」かなと思うところはあるが、人称にこだわった作者が編集者の一人称を複数用いたこと(僕、私)はよく分からなかったし、理解のために複数回読む必要があるのは億劫だった。
最後に、作者の一風変わった恋愛小説の系譜として『去年の冬、きみと別れ』というタイトルはいいなと思いました。タイトルの「きみ」が誰かは分かりやすいし。(2017.06.21)
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