『蝶々の纏足』山田詠美の感想

小説

蝶々の纏足』 山田詠美著/新潮文庫

感想

十六にして、私、人生を知り尽くした。そんな筈、ないけど、とにかくそう思いこんだ。

この小説、そんな文で始まります。

主人公の瞳美(私)は、五歳のときに引っ越します。そこで、同い年のえり子と出会います。彼女は、一見我が儘というか高飛車な風にも見える、そして強烈な支配欲を持つ少女だったのです。支配欲という言葉は不適当かも知れません。とにかく周りのものをすべて自分の引き立て役にしているように、瞳美は思います。

さていくら幼いとはいっても、そんなえり子に好感を持つはずもなく、瞳美は小学校に通い始める頃から醒めた目で見るようになります。

確かに発言を見るとなかなか厳しいものが多いです。仲の良さを確かめるようなものも多いのですが、それにしたって、わざわざ尋ねるというのは二人の仲が裂かれそうになっているという意識でもあったのでしょうか。

ありがちな(?)台詞として、女性が「私のこと好き?」なんて男性に尋ねることがあります。これは疎遠になりつつあるという意識からのものでしょうし。

(もっといろんな話がありますが)二人は同じ高校に進学します。えり子が瞳美をそばに置いておきたいと思ったからの行動なのでしょう。

そこで、瞳美はえり子よりも先に彼をつくります。これは瞳美が絶対しようとこだわっていた点でした。勿論、えり子は「抜け駆けはしないで」といったようなことを伝えるのですが、これに反抗的な瞳美は聞き入れず、えり子を失望させ、そして二人の仲は静かにしかし決定的に決別するのでした。

蛇と小鳥、どっちがどっち?

二人が家の前を流れる小川のほとりで遊んでいるとき、蛇の死骸が流れてきました。小鳥を飲み込もうとして、失敗したらしく、蛇の腹は膨らみそして割け、嘴と羽が覗いています。それを見て、瞳美はこう呟きます

「大き過ぎるものを呑み込もうとするからよ」と。

これは普通ならば、瞳美はえり子の引き立て役、側に置いておくだけの存在としては不適で、結局は、仲違いしてしまった。と、読むのでしょうか。

しかし、ときに残酷な一面を見せつつも、瞳美を庇うような素振りも見せていたえり子。それを「蛇」に喩えるのでしょうか。

このとき、えり子のそんな様子は、淋しさの裏返しと読むのかも知れません。瞳美が離れていく中で、実は彼女はとっても優しいんだよって。

最後のシーン、二人の仲の良さを示しているものだと信じています。

第96回芥川賞候補

・形式

小説、短篇

・あらすじ

私の心を束縛し、私の自由を許さない美しき親友のえり子。その支配から逃れるため、私は麦生を愛し、彼の肉体を知ることで、少女期からの飛翔を遂げる。

・収録話数

・初出

文藝、1986年12月号

・刊行情報

蝶々の纏足(河出書房新社)

1987年1月

蝶々の纏足(河出文庫)

1987年8月

蝶々の纏足・風葬の教室(新潮文庫)

1997年2月28日

・受賞歴、ランキング

第96回芥川龍之介賞候補(文藝春秋、1987年3月号)

・読了日

・読了媒体

蝶々の纏足・風葬の教室(新潮文庫)