真相は如何に!?芥川龍之介「藪の中」を読む

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芥川龍之介「藪の中」

【内容】

藪の中で発見された男の死体。
その真相をめぐって、7人の人間が証言をする。死体を発見した木こり、殺された男の妻、そして巫女の口を借りた死人その人まで—-。

それぞれの証言は食い違い、最後まで真実が明かされることはない。
現代では、「藪の中」とは「関係者の証言が食い違い、真相が分からないこと」を意味します。その元となったのがこの小説です。『今昔物語』から着想を得て、見事にドラマ化された本作品は、これまでにその真相について多くの議論を呼び、映画の題材となってきました。

【著者紹介】

芥川龍之介(1892–1927)

東京生まれ。東京帝国大学在学中、菊池寛らとともに同人誌『新思潮』に参加して創作を開始、『羅生門』を発表する。『鼻』が夏目漱石に絶賛され、文壇の注目を集めた。代表作品に、古典から着想を得ながら、みごとに現代風に仕上げられた短編小説『芋粥』『薮の中』『杜子春』など。35歳のとき、服毒自殺により他界。

【感想】

『藪の中』は芥川龍之介が1922年(大正11年)、月刊雑誌「新潮」1月号に発表した短編小説です。

『今昔物語集』巻二十九第二十三話「具妻行丹波国男 於大江山被縛語(妻を具して丹波国に行く男、大江山において縛られること)」の説話が題材となっています。ここでは、若い盗人に弓も馬も何もかも奪われたあげく、藪の中で木に縛られ妻が手込めにされる様子をただ見ていただけの情けない男の話で、語り部は妻の気丈さと若い盗人の男気を褒め称えて、話を締め括っているということです。この情けない男を殺し、殺人事件に仕立てたのが『藪の中』なのです。

・・・一体真相はどれなのか?

1、多襄丸の白状 – 男を殺したのは私である。最初は男を殺すつもりはなかったが、強姦した女の情にほだされ、なりゆきで殺した。殺している間に女を見失った。

2、清水寺に来れる女の懺悔 – 強姦されるさまを夫に見られたことを恥と知り、手中の小刀を使って夫を殺した。自分も後を追うつもりだったが死にきれずにいる。

3、巫女の口を借りたる死霊の物語 – 事が終わった後、妻は私の存在が疎ましくなり、盗人に私を殺すようにけしかけた。盗人は私の承諾を得て、妻を殺しにいった。妻は危機を察して私を見捨て逃げた。藪の中に一人残された私は世を儚んで、妻が落とした小刀を使い自刃した。

1が真相であった場合・・・女性は自らが逃げるために夫を利用し見殺しにしたということになります。

2が真相であった場合・・・女性は恥を知り夫を殺してしまいますが、自らは死にきれません。

3が真相であった場合・・・妻は夫が不要の存在になったことを知り殺させようとしましたが、そんな行動は不義であると男と盗人は思い女を殺そうとしたところ女は逃走、男は自殺したということになります。

つまりはどれが真相であろうと、この小説の中で女性は悪女として描かれているのです。芥川自身が女性嫌いだったかどうかは知りませんが、書いたときに女性から暴言でも浴びせられたのかとも思える所行です。

逆に言えば、どの話にしても女性は生き残っており、当時男尊女卑が当然であった世の中に、男性より女性の方が逞しく強靱であるのだとでも言って、女性の地位向上について物申したかったのかも知れません。

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