『誘拐ラプソディー』荻原浩の感想

小説

『誘拐ラプソディー』 荻原浩/双葉文庫

【内容】

スリルとサスペンス、ユーモアとペーソス、エンターテインメント小説のすべての要素がてんこ盛りにかかわらず、胸やけするどころか胸がジーンとなること必至。本書を読まずして「誘拐ラプソディー」は語れない。今世紀最高のコミック・ノヴェル!

伊達秀吉は、金ない家ない女いない、あるのは借金と前科だけのダメ人間。金持ちのガキ・伝助との出会いを「人生一発逆転のチャンス?」とばかりに張り切ったものの、誘拐に成功はなし。警察はおろか、ヤクザやチャイニーズマフィアにまで追われる羽目に。しかも伝助との間に友情まで芽生えてしまう―。はたして、史上最低の誘拐犯・秀吉に明日はあるのか?たっぷり笑えてしみじみ泣ける、最高にキュートな誘拐物語。

【著者紹介】

荻原浩

1956年埼玉県生まれ。成城大学卒業後、広告会社勤務を経てコピーライターとして独立。97年『オロロ畑でつかまえて』で第10回小説すばる新人賞を受賞し、デビュー

【感想】

進学や、就職、或いは進級したときのクラス替えの際に、周りが知らない人もしくは今まで話しかけたことがなかった人と話しかけようとすると、妙に意識してしまい上手く話せない、ということがよくあります。それはその人について何も知らないという理由故のものでもあるでしょうが、なにより誰とも、気が合う人とも気が合わない人とも、仲良くしたいという願望によるものです。そんなとき、最初に話さなかった人となぜか知らないが親しくなることがあります。それは最初の印象と実際のその人との差が大きく意外性を感じたからでしょう。

本作でも、一つの友情が成り立ちます。一人は、伊達秀吉。父親から「日本を獲るような大きな男になれ」と言う理由だけで、大層な名前を付けられた彼ですが、実際は三十八にもなって、妻なし、子どもなし、家なし、金なしという、人物です。もう一人は、篠宮伝助という、小学校の入学式を目前に控えた六歳の少年です。こちらはコンビニの弁当も食べたことがない程度にお金もあり、スペイン語も習わせられているという、裕福な少年です。秀吉は誘拐をたくらみ、伝助は家出をもくろみ、そんな二人はお互いの思慮を知る由もなく、行き先のない小旅行さながらに行動することになります。

そんな秀吉にとって災難なのが、伝助の父親が指定暴力団の組長であったことです。まったく危機感の感じられない逃亡では、意識しても強面の組員、その中にいるらしい裏切り者、はてはチャイニーズ・マフィアや警察、までも絡み複雑な様相を呈してきます。

そんな秀吉と伝助の「共犯者」と呼べるような関係に友情が芽生えたのは、二人が多くの時間を共に過ごしたからでしょう。多くの時間といってもわずか三日のことです。しかし、寝るときも食べるときも、他の時間も常に一緒にいれば、共通点が生まれ多くの会話を交わすようにもなるでしょう。そのことが最も重要なのです。

序盤の面白おかしい描写が、次第にもの悲しげな様子に何の抵抗もなく変化して行くところに、読者は感心させられます。

・形式

小説、長篇

・あらすじ

スリルとサスペンス、ユーモアとペーソス、エンターテインメント小説のすべての要素がてんこ盛りにかかわらず、胸やけするどころか胸がジーンとなること必至。本書を読まずして「誘拐ラプソディー」は語れない。今世紀最高のコミック・ノヴェル!

伊達秀吉は、金ない家ない女いない、あるのは借金と前科だけのダメ人間。金持ちのガキ・伝助との出会いを「人生一発逆転のチャンス?」とばかりに張り切ったものの、誘拐に成功はなし。警察はおろか、ヤクザやチャイニーズマフィアにまで追われる羽目に。しかも伝助との間に友情まで芽生えてしまう―。はたして、史上最低の誘拐犯・秀吉に明日はあるのか?たっぷり笑えてしみじみ泣ける、最高にキュートな誘拐物語。

・収録話数

・初出

・刊行情報

誘拐ラプソディー(双葉社)

2001年10月

誘拐ラプソディー(双葉文庫)

2004年10月1日

・読了日

2008年5月11日

・読了媒体

誘拐ラプソディー(双葉文庫)