『フィッシュストーリー』伊坂幸太郎の感想

小説

『フィッシュストーリー』 伊坂幸太郎著/新潮社

【内容】

あの作品に登場した脇役達の日常は? 人気の高い「あの人」が、今度は主役に! デビュー第1短編から最新書き下ろし(150枚!)まで、小気味よい会話と伏線の妙が冴える伊坂ワールドの饗宴。
本作は、表題作を含む4作の短編集。

【著者紹介】

伊坂 幸太郎

1971年千葉県生まれ。’95年東北大学法学部卒業。’96年サントリーミステリー大賞で、『悪党たちが目にしみる』が佳作となる。2000年『オーデュボンの祈り』で、第5回新潮ミステリー倶楽部賞を受賞しデビュー。’03年『アヒルと鴨のコインロッカー』で第25回吉川英治文学新人賞を、’04年「死神の精度」で第57回日本推理作家協会賞短編部門を受賞。

【感想】

伊坂幸太郎といえば、僕の大好きな作家です。それゆえ、期待と不安の両方を抱え読みました。結論から言うと、可もなく不可もなく、といった感じでした。

残念だったのは、ラストが読めてしまったということです。表題作では、最後のページを開く前に「これで終わりだろうな」と感じてしまいました。4作目の「ポテチ」のラストにいたっては、「伊坂ならラストはこうするだろうな」という予感のようなものがあって、的中してしまいました。もちろん、短編で衝撃的なラストにもっていくのは至難の業なのですが、それにしても、伊坂の短編はいまひとつの感がしてしまいます。チルドレンは傑作だと思ったのですが、死神の精度にせよ、にせよ、本作にせよ、伊坂幸太郎の世界、思いは伝わってくるものの、重力ピエロや、アヒルと鴨のコインロッカーを読んだときのような衝撃が来ませんでした。1作目はデビュー時期の作品であるので、先にあげた2作品と比べるのは酷かもしれません。

登場人物が普通だったことも、残念でした。凝りに凝ったキャラクターを描いてほしかったです。これは、ゴールデンスランバーにも共通します。陽気なギャングが地球を回すや、アヒルと鴨のコインロッカー、砂漠に登場したような強烈な個性の再来を願っています。

しかし、3作目の「フィッシュストーリー」は表題作ならではの出来だったとおもいます。シーンが飛び混乱もしたが、伊坂の世界観がよくあらわられており、伊坂らしさがでた良作でした。

何より、本作のような作品が出るのは伊坂の人気が高く、ファンが多いということがいえます。それを思えば、直木賞を受賞していないことなど些細なことかもしれませんが、ついに東野圭吾に並んでしまったあの記録が、更新されないことを祈るばかりです。

・形式

小説、短篇集

・あらすじ

最後のレコーディングに臨んだ、売れないロックバンド。「いい曲なんだよ。届けよ、誰かに」テープに記録された言葉は、未来に届いて世界を救う。時空をまたいでリンクした出来事が、胸のすくエンディングへと一閃に向かう瞠目の表題作ほか、伊坂ワールドの人気者・黒澤が大活躍の「サクリファイス」「ポテチ」など、変幻自在の筆致で繰り出される中篇四連打。爽快感溢れる作品集。

・収録話数

「動物園のエンジン」

「サクリファイス」

「フィッシュストーリー」

「ポテチ」

・初出

「動物園のエンジン」   小説新潮、2001年3月号

「サクリファイス」    別冊東北学、2004年8月号

「フィッシュストーリー」 小説新潮、2005年10月号

「ポテチ」        書き下ろし

・受賞歴、ランキング

第20回山本周五郎賞候補(小説新潮、2007年7月号)

・読了日

2008年2月16日

・読了媒体

フィッシュストーリー(新潮社)