・形式


小説


 



・あらすじ


堀江敏幸の文章は、いろっぽいのだ。――川上弘美(「解説」より)
芥川賞受賞作


「なんとなく」という感覚に支えられた違和と理解。そんな人とのつながりはあるのだろうか。 フランス滞在中、旧友ヤンを田舎に訪ねた私が出会ったのは、友につらなるユダヤ人の歴史と経験、そして家主の女性と目の見えない幼い息子だった。 芥川賞受賞の表題作をはじめ、人生の真実を静かに照らしだす作品集。


ヤンはそこでふいに立ち上がってレンジのほうへいき、やかんを火にかけ、そのままなにも言わず2階にあがって、大きな写真立てを持って下りてきた。私にそれを差し出し、もういちどレンジに戻って火を調節しながら、珈琲か紅茶かと訊いてくる。(「熊の敷石」より)


 


 


・収録話数


熊の敷石


砂売りが通る


城址にて


 



・初出


熊の敷石    群像、2000年12月号


砂売りが通る  新潮、2000年7月号


城址にて


 



・刊行情報


熊の敷石(講談社)


2001年


 


熊の敷石(講談社文庫)


2004年2月


 


 


・受賞歴、ランキング


第124回芥川龍之介賞(文藝春秋、2001年3月号)


三浦哲郎△  


「この作品はあまりにもエッセー風で小説としての魅力に乏しかった。」



宮本輝×


「作品の主題なのかどうなのか、熊の敷石なるものも、私には別段どうといったことのないただのエスプリにすぎないのではないかという感想しか持てなかった。」


 


日野啓三○  


「人間の心のゆがみや人間同士の関係のずれで偏光する精神の微妙な光も挿しこんでいて、緻密に感じとるとなかなか複雑で不気味でさえある非凡な作風なのであった。」


 


石原慎太郎



池澤夏樹○  


「内奥にはなかなか凄いものがある。ヨーロッパ人の思考法の精髄をさりげなく取り出して並べる手つきがいい。軽い展開の中に重い原石が散りばめられている。」



黒井千次◎  


「人と人との関りの内にある微妙な温もりを知的な言葉で刻み込もうとした大作品であるといえよう。民族の歴史の孕む必然と個々の偶然との織り成す人間の生の光景が、幾つものエピソードを通して浮上する。」


 


古井由吉△  


「人がどこそこに在る、住まう、あるいは滞在する心において、二人の間でも交差のしようもないズレがある。いや、むしろ驚くべきはそれでも時折話の通るということだ、と感じさせる作品である。」


 


田久保英夫○


「あまりに知的傾斜がすぎ、ときに廻りくどい文脈も見えて、欠点もあるが、私は小説への一つの活路を願って、これを推した。」


 


河野多恵子×


「彼等の会話、幾つものエピソード、食事や風景のこと、いずれもエスプリもどき、知性まがいの筆触しか感じられない。「私」のような閲歴であるらしい作者がそういう自分を直接に当てにして「私」を書いているからだろう。」


 


村上龍○


「コミュニケーション不全という普遍的なモチーフが、ペダンチックに単純に堕するのを、かろうじて防いでいる。ただ冒頭の夢のシーンは不要なのではないかと思った。」


 



・読了日


2012年2月8日


 



・読了媒体


熊の敷石(講談社)


 



・感想メモ


紀行文ともエッセイとも言えそうな小説で総じて退屈だった。以前読んだ「雪沼」は非常によかったのだが…(2018.06.13)