本の情報ブログ 火の秋のモノガタリ

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たそがれの市 あの世お伽話 /近藤ようこ

・形式

漫画、長編、死者

 


・あらすじ

ここは死人が集まる市。今日も曰くありげな生者が迷い込んできて……

 

死ぬと最初にたどり着くさびしい場所、それが「たそがれの市」。
自分が死んだと気付かない”大人のおいと”を見かけた少女のおきく。おきくはおいとにまとわりつく幽霊を遮り言う。「お前は元の場所に戻りな」と。神隠しとされていたおきくは、幼馴染のおいとと谷筋でもみ合ううちに――。たそがれの市でおきくの思いを知ったおいとは……(「第一話 紅の皿」)。ほか、病で先だった母が子を思う深い哀しみを描いた「第二話 涙池」や身分違いの恋と因縁を描いた「第三話 思い出」、津波に流されて命を落とした娘を探し求めて迎えにくる現代の家族との交流の物語「第四話 津波」など。

 

たそがれの市で、思いを残した死者と生者が交わるとき……生と死という壮大なテーマに向かい合った感動の全十一話。
本書のための描き下ろしも収録。

 

 

・収録話数

はじめに

第一話 紅の皿

第二話 涙池

第三話 思い出

第四話 津波

第五話 片袖衣

第六話 再会

第七話 井筒

第八話 案山子

第九話 馬市

第十話 迎えの舟

第十一話 骨さらい

 


・初出

第一話 紅の皿   『Mei(冥)』Vol.01

第二話 涙池    『Mei(冥)』Vol.02

第三話 思い出   『Mei(冥)』Vol.03

第四話 津波    『Mei(冥)』Vol.04

第五話 片袖衣   『Mei(冥)』Vol.05

第六話 再会    『幽』vol.23

第七話 井筒    『幽』vol.24

第八話 案山子   『幽』vol.25

第九話 馬市    『幽』vol.26

第十話 迎えの舟   描き下ろし

第十一話 骨さらい 『幽』vol.27

 


・刊行情報

たそがれの市 あの世お伽話(角川書店)

2017年10月28日

 

 

・読了日

2018年5月12日

 


・読了媒体

たそがれの市 あの世お伽話(角川書店)

初版

 


・感想メモ

死後の世界を題材にした作品。表紙の女の子「おきく」は複数回登場するが、連作短編のようでもある。

 

 

各話の登場人物たちは、亡くなった後、または生死の境目を行き来するうちに「市」へとたどり着く。「死」を題材にした作品で美しく儚い。死後も健気な少女のままである「おきく」に救われるような気分だ。

 

 

それにしても最終話の「おじさんがさすらって」いくシーンは秀逸。生きていくのだという意識の問題とも読めるし、「人間は二度死ぬ」というように受け取ることもできる。見開きのページで、おじさんと平行に描かれた「あー…」「あ…」「…」のフキダシは読者に強烈なインパクトを残すだろう。しかしそれで終わるのではなく、「おきく」が笑顔を見せるのがいい。きっとこの笑顔がなかったら読後感に大きな差があったと思うからだ。(2018.05.12)