本の情報ブログ 火の秋のモノガタリ

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繋がる個体 /山本中学

・形式

漫画、長編、恋愛、社会人、高校生

 


・あらすじ

繋がる個体 / 山本中学 - モーニング公式サイト - モアイ

繊細な男心の機微を描かせたら右に出る者のいない(?)著者の持ち味がいかんなく発揮された、全サラリーマン胸キュン必至ストーリー。

 

職場の元カノと可愛すぎる女子高生に翻弄され、ダンジョカンケイと不純異性交遊の間で揺れる30男の逆説的恋愛賛歌

 

5年前に別れた職場の元カノ・くるみのことをひきずりつつ過ごす真面目系サラリーマン・井口正行は、数合わせで連れて行かれた合コンで、可愛すぎる女子高生・ここみと出会う。しかし、この女子高生、実は……!!

 


・収録話数 

全35話

 


・初出

モーニング、2015年15号~52号

 


・刊行情報

モーニングKC、全4巻

繋がる個体 1(2015.07.23)

繋がる個体 2(2015.07.23)

繋がる個体 3(2015.12.22)

繋がる個体 4(2016.01.22)

 


・読了日

2017年2月11日

2018年2月16日

 


・読了媒体

Kindle

繋がる個体 1~4(モーニングKC)

 


・感想メモ

本作の主人公正行は職場の元カノくるみのことが別れた後も未だに気になったまま。彼女のことを一途に想ってはいるものの恋愛は上手くいかずに別れてしまった。そんな彼が数合わせに連れて行かれた合コンで女子高生のここみと出会うことで物語は始まる。

 

 

本作はそんな三人を中心とした恋愛漫画だ。関係が上手くいったり、上手くいかなくてもどかしく感じたりしながら話は進んで行く。1巻の18-19ページを見たときは画面のあまりの垢ぬけなさに一瞬だけ心配したどこか懐かしい絵柄も魅力だ。

 

 

以下ネタバレ注意

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登場人物とか人間関係とか

 

全4巻、2章構成(詳細は後述)のわりに人間関係はややこしい。どうしようもなくこじれて行きそうだが、実際はそんなことはなくテンポよく、気持ち良く進んで行く。この辺りはいかにも上手い。昼ドラみたいにドロドロとこじれさせることは簡単だろうけど、登場人物たちが思っていることを正直に口に出してくれるので、読んでいる方としては必要以上にもどかしさを感じることなく楽しむことができる。

 

 

これはメインキャラクターの三人が相手のことを一途に想っているからだろう。三人以外に登場する様々なキャラはメインキャラ三人が作る一途で単純な相関図を壊そうと腐心する。しかし相関図は簡単には壊れないし書き換えられることもない。そこにハッピーエンドを望む現代型の読者は安心させられる。もちろん僕もだ。1巻2巻と三角関係は進行していく。ストーリーを楽しみながらも、一途なキャラから、読者はこの後の展開をおぼろげにも予想するだろう。そしてその予想は見事に的中することになる。でもそこに意外性がなかったという不満はない。もともと不公平な三角関係なのだから。「まあこうなるよね。良かった」と大満足だった。そう2巻までは

 

しかし第2章

 

物語は3巻収録分から第2章に突入する。作中では2巻終了時から1年が経過したという設定。僕はてっきり「2巻で上手くまとまったのにまだ続けるってことは、1回付き合ったけどちょっと上手くいかなかったり、些細なことから喧嘩しちゃったり、そこをかき回して行こうとするのかな。きょうは会社休みます。とかみたいに」なんて思っていた。

 

 

全然違った。

 

 

まず主人公の正行の登場シーンがない。メインになったのはここみのほう。そして新しい恋愛。作中で時間が経過して新章というのは別に珍しくもない。「ジョジョ」だって「ちはやふる」だって「うさぎドロップ」だってそうだ。でも予定された前日譚だった「ちはやふる」とは違って本作の時間経過はちょっと戸惑うものだった。「ああ、いきなり時間飛ぶんだ。え?そうなるの?」みたいな。「うさぎドロップ」でも戸惑ったことをはっきりと思い出した。

 

 

2巻の終盤でタイトル回収をしたし、まさしく「これで終わりますよ」的な「それにしてもこの1カ月くらいオレの人生史上かなりドラマしてた~~!」の決めゴマ。漫画が始まった時点でどのくらいの構想があったんだろうって気になるくらいだった。

 

一途な登場人物たち

 

そもそも本作を1巻だけでやめることなく読み進めた人たちは、本作のどこを気に入ったのだろうか?ということを考えてみると、「ちょっと懐かしいような絵」「不器用だけど一途なメインキャラたち」「テンポのいいストーリー」などが思い浮かぶ。

 

 

その中でもとくに僕が気に入ったのが「一途さ」だった。僕としてはやっぱり初心を貫徹してほしいし、最初に気になった人と上手くいってほしいなと思って読んでいる節がある。おもしろい漫画でも、最終的に別れたり、後発のキャラとくっ付いたりすると嫌いになってしまうこともあるくらいだ。だから本作は楽しめたし、その意味でも満足できたのだ。

 

 

それが第2章になって、(読者的に)ちょっと前までは主人公を想っていたここみが別のキャラと好きあって、暮らし始めるというのはどこか残念だった。現実的だと言われればそうだろうし、女の人ってそういうところあるよねと言われればそうなのかもしれない。でも作中では1年が経っていても、読者的にはそこまで時間は経っていないのだ。ぜんぜん心の準備ができていない。

 

 

もうひとつ残念だったのは、人間関係が絡み合った第1章のキャラに比べて第2章のキャラがいまいちよく見えてこなかったことだ。甲斐みさをとバイトのくだりなんかそうで、ラストシーンに居合わせるくらい大事なキャラなのに、「実は意外と良い人」というくらいの印象しかなくて、対抗馬にするにしてはいかにも弱かった。この辺は明らかにページが足りていなかったのだと思う。

 

 

2巻までは間違いなく傑作だったし、全4巻で見てもおもしろい漫画だった。それは心からそう思う。それだけに後半がなんだかもったいなかった。それでもラストシーンを、前の話から繋げつつ、見事にまとめ切った作者の剛腕は魅力だと思う。もう一つ足りなかったのはページ数か編集力だったのかなと邪推しながら次作を楽しみに待ちたいと思う。もう連載始まってるし。(2018.02.16)