本の情報ブログ 火の秋のモノガタリ

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少年少女漂流記 /古屋兎丸

・形式

漫画、連作短編、学校、学生、思春期

 


・あらすじ

僕はみんなと同じようにうまくやれているだろうか?このままちゃんと大人になれるのだろうか?友情、恋愛、容姿、不登校、家族…抱えきれない不安と過剰な自意識にさいなまれて、少年少女たちは非日常の別世界に迷い込む。妄想か、現実か。漂う彼らが行き着くのはどこなのか。古屋兎丸と乙一、二人の鬼才が鮮烈に描き出す揺らぐ10代の心模様。ひたむきでちょっぴり痛い青春物語の傑作。

 


・収録話数

第一話=沈没記

第二話=アリのせかい

第三話=魔女っ子サキちゃん・前編

             ・後編

第四話=学校の中枢

第五話=お菓子帝国・前編

         ・後編

第六話=モンスターエンジン

第七話=「たいと」と読む「雲」3つと「龍」3つから成る漢字*1様を見つけたら

第八話=竜巻の飼育の巻・前編

           ・後編

最終話=ホームルーム

 

巻末特別付録=古屋×乙一×兎丸、自作を語る

 


・初出

 小説すばる、2006年2月号~2007年1月号

 


・刊行情報

少年少女漂流記(集英社)

2007年2月28日

 

少年少女漂流記(集英社文庫)

2010年3月

 

 

・原作者

乙一

 

 

・読了日

2018年1月19日

 


・読了媒体

少年少女漂流記(集英社)

 


・感想メモ(内容についての記述有り)

本作はいまだ中二病だという、二人がつくりだした作品だ。詳細は巻末の対談にあるので割愛するが、一般的な原作+作画という関係とは異なるよう。いわば共同制作だという。

 

テーマ

 

本作は10代の男女を主人公とした連作短編集である。そのテーマを簡潔に示した言葉がある。

 

 「ぼくたち忘れないよ 10代の吹き荒れる大風にのみこまれたこと」

 

作中に登場する各話の主人公たちはいずれも10代で、大なり小なり問題を抱えている。あるいは不安を抱えていると言ってもいい。身近な人の死、クラスの中での孤立、上手くコミュニケーションを取ることができないことへの苛立ち。

 

誰しも覚えのあることだけに彼らの感情や葛藤は読者にストレートに届く。様々なケースの中には読者の実体験に近いものもあるだろうし、こちらとしても痛いし苦い。そんな彼らが一人で孤独に彷徨いこんでいく場所がある。

 

理想の空間

 

空想しがちな主人公たちが迷い込むのは自らが思い描いた理想の空間だ。また、登場人物の中には自分の「望むもの」と遭遇した者もいる。自分の好きなものしかない世界から眼下の教室を見つめる少女、お菓子帝国軍と孤軍奮闘する女子、幼き日々から離れられない女の子。

 

そんな彼らが望んでいたのは周囲の環境すべてを吹き飛ばしてくれるような圧倒的な存在だった。

 

ハッピーエンド?

 

10代の息苦しさ、巨大な自意識による不安や閉塞感を抱える主人公たちに作者は(おそらく)希望を与えて物語は終わりを告げる。

 

 

ところで僕は各話の主人公たちはいささか形式的というか様式美というかテンプレ的だなと思っていた。彼らの悩み事が明白で具体性を持ち、個性的であるために「キャラクター」的だと思ってしまったのだ。そのため主人公の一人一人は作者の悩みやコンプレックス、不安の一部分をそれぞれ担当していたのだと勝手に解釈しながら読み進めていた。

 

 

でもラストシーンを読んで考えを改めた。それだとラストの展開がちょっといくらなんでも寂しすぎるのだ。物語の最初と最後で主人公たちは自分一人で閉じこもったまま何も変わっていないことになってしまう。それではあんまりだ。

 

 

そのため僕は深読みをせずに主人公たちを独立して見る、素直な見方へと修正を図った。この物語はハッピーエンドで終わるべきだし、主人公たちが10代を少しでも前向きに見直してほしいとも思うからだ。そしてそれは読者自身が10代を見直すことにも直結している。(2018.01.21)

*1:ルビ、タイト