・形式


 小説、長篇


 



・あらすじ


野間文芸新人賞受賞作
1通の手紙から羊をめぐる冒険が始まった 消印は1978年5月、北海道発。


 


あなたのことは今でも好きよ、という言葉を残して妻が出て行った。その後広告コピーの仕事を通して、耳専門のモデルをしている21歳の女性が新しいガール・フレンドとなった。北海道に渡ったらしい<鼠>の手紙から、ある日羊をめぐる冒険行が始まる。新しい文学の扉をひらいた村上春樹の代表作長編。


 



・収録話数


 



・初出


群像、1982年8月号


 



・刊行情報


羊をめぐる冒険(講談社)


1982年10月13日


 


羊をめぐる冒険 上(講談社文庫)羊をめぐる冒険 下(講談社文庫)


1985年10月8日


 



・受賞歴、ランキング


第4回野間文芸新人賞(群像、1983年1月号)



秋山駿◎


「村上春樹の『羊をめぐる冒険』は、この作者の発案した、気の利いた、しかし時に気障なところもある話法を存分に駆使したもので、とにかく面白かった。一匹の霊能者の羊を捜しに出掛ける旅を中心に、物語が成立している。こんな話法のスタイルでも長篇が描ける、というところが目新しかった。作者が自分の小説の世界をしっかりと支配している。」



上田三四二○


「新人というよりはもうすっかり出来上った感じである。初めから危うけがなかったが、『風の歌を聴け』『1973年のピンボール』の主題を継ぎながら、それよりひと回り大きくなっている。
 もしかしたら、悪く達者になっているところもあるかもしれない。謎があり、細部もいいので相当な長さをおもしろく試み進みながら、中頃に来て、何となくあしらわれている感じになって白けかけたが、また盛り返しておもしろく読み終えた。読み終えて羊というシニカルなシンボルの意味が充分に掴めたとは思えないが、羊憑きの友人鼠の述懐「完全にアナーキーな観念の王国だよ。そこではあらゆる対立が一体化するんだ。その中心に俺と羊がいる」は一つの鍵であろう。そう述懐する鼠がじつは死者であるところに、作者の解体の深さがある。と同時に、その鼠のために「僕」が河口の砂浜で二時間、泣いて去って行く最後の一行に、作者の快癒への祈りがみえる。」



大岡信◎


「村上春樹氏の『羊をめぐる冒険』には花があると思った。世阿弥のいった時分の花という言葉を借りれば、この作者の年齢でなければ咲かすことのできない時分の花がここには咲いている。それは紛うかたない才能のしるしであって、こういう人のこういう時期に新人賞というものが与えられるのでなければ、新人賞にはあまり意味がない。村上氏個人の作品歴でいえば、前作『1973年のピンポール』に較べ格段に作風が充実している。前作に対しては私は冷淡だったから、今度の作を産み出した作者の努力に敬意を払う。作品の構想をこまかく論じてゆけば、いくつかの疑問があるし破綻もある。しかしそれを上回って、作者の時分の花が時を得て咲いている珍らしさに感銘を受けた。」



川村二郎○


「すると村上春樹氏の『羊をめぐる冒険』が、およそ面妖な空想譚を、一貫した気分のスタイルで終始澱みなく語り通している、その仕上りの見事さにおいて一頭地を抜いているか、と思われてきたのである。」



佐伯彰一○


「村上春樹は、歯切れのいい、颯爽たる語り手で、フシギな羊探しの冒険譚という純粋絵空事を、よどみなく語りぬいて見せた。」


 



・読了日


2009年3月8日


 



・読了媒体


 羊をめぐる冒険 上(講談社文庫)


 



・感想メモ


まず、今のところ上巻しか読んでいません。本来なら下巻を読んだ時点で、感想を書くべきなんですが、いろいろと気になったところがあったので、この時点で書いておきたいと思います。


 


ねこなのにいわし


 



「でもじっとしてるんじゃなくてある意志をもって動くわけでしょ?意志を持って動くものに意志がないというのはどうも変な気がするな」




という台詞が出て、話の流れから、僕の飼い猫にいわしという名前が付きます。ねこなのに「いわし」でも一般でも「楓」とか「桜」とか植物とか、人でないものの名前の方もいます。


 



「新宿にあればそれは新宿駅で、東京にあれば、それは東京駅です」




名前と物語の関係ってのは、安部公房の「壁」などにも見られます。詳細はまた下巻に書きます。(2009.03.08)