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カフカ短篇集 /フランツ・カフカ

・形式

 小説、短篇集

 


・あらすじ

実存主義、ユダヤ教、精神分析。カフカ(1883‐1924)は様々な視点から論じられてきた。だが、意味を求めて解釈を急ぐ前に作品そのものに目を戻してみよう。難解とされるカフカの文学は何よりもまず、たぐい稀な想像力が生んだ読んで楽しい「現代のお伽噺」なのだ。語りの面白さを十二分にひきだした訳文でおくる短篇集。20篇を収録。

 


・収録話数

掟の門          

判決         

田舎医者

雑種

流刑地にて

父の気がかり

狩人グラフス

火夫

バケツの騎士

夜に

中年のひとり者ブルームフェルト

こま

町の紋章

禿鷹

人魚の沈黙

プロメテウス

喩えについて

万里の長城

 


・初出

 各項目

 


・刊行情報

カフカ短篇集(岩波文庫)

1987年1月16日

 


・翻訳者

池内紀

 


・読了日

2009年1月13日

 


・読了媒体

 カフカ短篇集(岩波文庫)

 


・感想メモ

本書は、253ページで20の短篇が収められています。一番短いものは文庫の1ページにも満たない小品から、53ページの短篇まであります。「変身」や「審判」を振り返ってみても、それに似ている雰囲気を持っているものや、解釈が難しいものまで多数が収録されています。

 

判決


「カフカがカフカになった」と形容される作品であり、「変身」と同じ年に執筆されたこともあってか、似たような印象を受けます。自分について決定するのは自分ではなく、他人からの影響を受けざるを得ないという感じでしょうか。


本書の解説が非常に秀逸で、それによると、


カフカの特徴は次の点にあるだろう。つまり、事実が揺らぎだす一点があって、それはふつう日常の世界ではありえないはずのレベルにおいて平然と報告される。


判決では、主人公は当初、事実は事実として認識していたはずなのですが、場面が明るい部屋から暗い部屋に転換するに至ってみると、それまでの事実が怪しくなる、と言うのです。

 


これは、「変身」でも扱われていることでもあります。当初は主人公の家族は借金で苦労していることが語られているんですが、虫に変身した後では、父は二年間は食っていけるだけの金を持っている男に変身している、と。

 


この共通点や父の変化の点は盲点であって、題の「変身」とは、主人公の虫への変身を表しているのみだと思っていたのが、実はこういう側面もあったのかと再確認させられました。

 

鳥籠が鳥を探しにいった


また解説で印象的なのは、カフカのノートの1917年の11月のところに書いてあったらしい、「鳥籠が鳥を探しにいった」という一行です。

 


もちろん、先にあったのは鳥のほうで、鳥籠は後から鳥を入れておくために考えられ造られたものです。なので、中に入れる鳥がいなければ、鳥籠はあくまでただの籠になるはずなのです。考えているとこのあたりから、頭がこんがらがってくるんですが、おそらくカフカの言いたいことは、鳥籠という言葉(認識)が生まれて、世の中の多くの人がそれを認めたら、それとして存在しなければいけないということになります。

 


これは、鳥籠だからまだ大した問題でもないんでしょうが、これが法律だとか、入れ物(建物)で考えると刑務所だとか留置所だと考えると、人(鳥)がいるところに犯罪(鳥籠)もあるものですから、そうすると鳥籠がなくなるには鳥がなくなるしかないとも言えます。そう考えると「判決」のラストで主人公がおそらく死んだのも当然だと思えます。

 


「判決」は多種多様な解釈ができる作品なんですが、解説のおかげで少しは理解できたような気がします。

 

流刑地にて


これは、上で述べたような、カフカの特徴を含んでいる作品で、彼の主張を雄弁に語っていると言えるものでしょう。

 


村上春樹の『海辺のカフカ』で、主人公のカフカ君が読んだことがあると語られる短篇ですが、両方とも難解な作品ですし、関連性を考えるまでに至りませんでした。

 


全体的な感想としては、やはり難解というか、理解できない感はついてまわっています。おもしろかったと感じたものもありましたが、それでも解説を読みさらに考えてのことなので、大変と言えば大変でした。(2009.01.14)