・形式


小説、連作短篇集


 



・あらすじ


佳奈が十二で、ぼくが十一だった夏。どしゃ降りの雨のプール、じたばたもがくような、不思議な泳ぎをする彼に、ぼくは出会った。左腕と父親を失った代わりに、大人びた雰囲気を身につけた彼。そして、ぼくと佳奈。たがいに感電する、不思議な図形。友情じゃなく、もっと特別ななにか。ひりひりして、でも眩しい、あの夏。他者という世界を、素手で発見する一瞬のきらめき。鮮烈なデビュー作。


 



・収録話数


サマータイム


五月の道しるべ


九月の雨


ホワイト・ピアノ


 



・初出


 



・刊行情報


サマータイム 四季のピアニストたち上(「サマータイム」「五月の道しるべ」)


MOE出版、1990年7月


偕成社コレクション、1993年5月



九月の雨 四季のピアニストたち下(「九月の雨」「ホワイト・ピアノ」)


MOE出版、1990年10月


偕成社、1993年5月


 


サマータイム(新潮文庫)


2003年9月1日


 



・受賞歴、ランキング


第10回月刊MOE童話大賞(「サマータイム」)


 



・読了日


2008年2月16日


 



・読了媒体


サマータイム(新潮文庫)


 



・感想メモ


本作の主人公である、佳奈と進の二人が広一に憧れた理由の一端が、彼が左腕の無かったことにもあると思います。彼が大人びた雰囲気を身に付けていたこともこの年代にとっては大きい理由の一つであることも確かです。左腕のない彼から受けた印象は奇異なものではなく、むしろ尊敬に近かったという事実がこの物語を、少年少女時代の思いを描ききったという点で、良作に挙げられることに一役買ったと思われます。


 



誰の言葉だったか忘れてしまいましたが、「子どもの行うことは間違いが多い。しかし、子どもがそれを行うのは間違いではない」というものがあって、感心したことがありました。つつじの花を自転車のかご一杯になるまで摘んでしまった佳奈、時に我が儘な姉の被害に遭っている進。積極的過ぎ、少々自己主張の強さが感じられる佳奈、そんな姉に振り回され、少し保守的な内向的な傾向が見られる進、その二人は対照的です。そんなマイナスの部分ばかり書くと、二人がさも魅力的でない主人公に思えてしまうかもしれませんが、二人の共通点、いや、広一も含めた三人の共通点が、不器用であることに気付くと何とも愛らしく思えてくるのが、この筆者の非凡さを感じる点です。(2008.08.11)