・形式


小説、中篇


 



・あらすじ


ある日、ぼくの前に佐々井が現れてから、ぼくの世界を見る視線は変わって行った。ぼくは彼が語る宇宙や微粒子の話に熱中する。佐々井が消えるように去ったあとも、ぼくは彼を、遙か彼方に光る微小な天体のように感じるのだ。科学と文学の新しい親和。清純で緊張にみちた抒情性。しなやかな感性と端正な成熟が生みだした、世界に誇りうる美しい青春小説の誕生。


 



・収録話数


 



・初出


 



・刊行情報


スティル・ライフ(中央公論社)


1988年3月


 


スティル・ライフ(中公文庫)


1991年12月10日


 



・受賞歴、ランキング


第13回中央公論新人賞


 


河野多恵子


 


丸谷才一


 


吉行淳之介


 


 


第98回芥川龍之介賞(文藝春秋、1988年3月号)


大庭みな子△  


「雪や「鳩」の場面が心に残り、洒脱な仕上りになっている。最初の短い章は、抽象性の強い作風であるだけに、損をしているのではないかと思えた。」


 


開高健△   


「一種、童話に近い味である。そううまくいきますかな、という疑問が終始つきまとうけれど、文体の背後にある詩人肌がストーリーを救っている。」



黒井千次◎  


「ともすれば観念的な饒舌に陥りがちなこの種の作品にあって、公金横領とか時効とかいう事象が、現実をめぐるゲームの力学のように扱われているのも面白いと思った。」


 


河野多恵子○


「個性的に新しい感覚のよさ、乾いた抒情の味は、なかなかのものだった。作者が育んできた独自の思想と両者が溶け合っていて、この作品および作者の得難い強みはそこにあり、期待をそそる。」


 


田久保英夫○  


「魅力は、星のような自分の外の世界と、内部の世界が呼応する詩的な感覚を保ちながら、染色工場の作業や、大きな屋敷の中で株の売買をする現実的な生活も、かなり生なましく描きえていることだ。」


 


日野啓三◎  


「旧世代から端正な文章を高く評価されると同時に、二十代の人たちからも、この感受性は親しく読まれる要素をもっている。」



古井由吉△  


「ひとつの透明な歌として私は読んでその純度に満足させられたが、しかし宇宙からの無限の目は、救いとなる前にまず、往来を歩くことすら困難にさせるものなのではないか。また、被害者が存在するかぎり、人は見られている、つまり透明人間のごとくにはなり得ないのではないか。」


 


三浦哲郎○ 


「まず文章がいいと思った。いかにも静物を描くのにふさわしい、硬質で、いくらかひんやりした手ざわりの、それでいて適度な柔軟性も持っている。」


 


水上勉◎ 


「今生の世をこんなふうに切りとってみせる才覚はなみのものではない。授賞ときまれば異存なしと心をきめて出かけたところ、予想どおり満点に近かった。」



吉行淳之介◎  


「よかった。ここに書かれてあることをそのまま読んでゆき、終りまでたどりつけば、埃っぽい気分がずいぶんとさっぱりしているのに気付く」


 


 


・読了日


 



・読了媒体


 スティル・ライフ(中公文庫)


 



・感想メモ


作品全体の雰囲気、ところどころにある格好良い台詞はとても良かったんですが、作中のキーワードである、宇宙や微粒子にとらわれてしまって、気がついていたら終わってしまっていました。別の作品も読んでみたいと思います。(2009.08.13)