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彩乃ちゃんのお告げ /橋本紡

・形式

 小説、連作短篇

 


・あらすじ

なぜか“教主さま”だという女の子を預かることになった。彩乃(あやの)ちゃんといって、一見ごく普通の、小学五年生の女の子だ。花屋に勤める二十代の智佳子(ちかこ)、進路に悩む高校三年生の徹平(てっぺい)、東京から地方に越してきた小学五年生の佳奈(かな)が、彩乃ちゃんとの出会いで知った人生の奇跡。前に進むすべてのひとに捧げる物語。

 


・収録話数

夜散歩

石階段

夏花火 

 


・初出

 


・刊行情報

彩乃ちゃんのお告げ(講談社)

2007年11月3日

 

彩乃ちゃんのお告げ(講談社文庫)

2011年3月15日

 


・読了日

 


・読了媒体

 彩乃ちゃんのお告げ(講談社)

 


・感想メモ

なんだかんだと言っても、『ひかりをすくう』、『月光スイッチ』、『空色ヒッチハイカー』の三作を読んだときに違和感を感じてしまったことを最初に言っておきたいと思います。文体や雰囲気は『半分の月』や『流れ星』のそれと似ていたんですけど、どこかが違った。でもこの本を読んだときにそんな違和感はありませんでした。橋本さんは今、文体を少し変えたり、工夫したりして、自分を高めようとされているらしいです。回帰ではないかもしれませんけど、少し懐かしかった。こんな本を読みたかったんだと。

 

本作について


本作は、3つの短篇で構成されています。共通しているのは彩乃ちゃんという教主様が登場すること。なにやら権威ある宗教の教祖の孫らしく、教祖の危篤によって起こったごたごたに巻き込まれないようにと、三カ所に預けられます。

 


彩乃ちゃんは大したことはしません。ただ登場人物がよく暮らしていけるような、本当に些細な手助けをしてくれます。

 


彼氏の前に無意識に化粧もせず出てしまう自分を悲しむ女性、受験の天王山夏休みに勉強をせず、山の階段を掘り起こす不器用な少年、クラスにも父親にも上手くなじめない少女。彼らに何かを言うわけでもなく、あからさまに手を貸そうとするのでもない。

 


それでも、何かものを忍ばせて、彼らの状況が良くなるようにしてあげたり、アドバイスをしてあげたりします。こんな教主がいる宗教なら入ってみたいとも思わされてしまいます。

 


そしてその結果そんなに大きな変化ではないかも知れないけれど登場人物達は救われていきます。「明日はきっと、いいことあるよ」という帯のとおり。

 


日々は過ぎていく。
いろんなことが移り変わっていく。
空の色のように、川原に茂る草のように、お父さんのように、お母さんのように。いつかは、彩乃と過ごしたこの夏さえも、色褪せるかもしれない。
たぶん、それでいいんだと思う。


上の文章にやられました。思わず目が釘付けになっていました。

 


この著者、つまらない人には全然おもしろくない。でもはまる人には、読むのを止められなくなります。(2008.10.13)