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ひかりをすくう /橋本紡

・形式

 小説、長篇

 


・あらすじ

智子は、仕事を辞めることにした。評価の高いグラフィックデザイナーだったが超多忙の生活を送るうちに、パニック障害になってしまったのだ。一緒に暮らす哲ちゃんも賛成してくれた。職場で知り合った哲ちゃんはひと足先に仕事を辞め、主夫として家事をこなしている。哲ちゃんは智子が最初にパニック障害で倒れたときも病院に付き添ってくれた、料理の上手なパートナーだ。


ふたりで都心から離れ、家賃の安いところで、しばらく定職を持たずに生活することにした。


 ひょんなことから不登校の女子中学生、小澤さんの家庭教師を始めることになった。そして、小澤さんがひろってきた捨て猫のマメ。3人と1匹の生活はつつましくも穏やかに続く。やがて薬を手放せなかった日々がだんだんと遠いものとなっていった。
 そんなある日、哲ちゃんの元妻から電話があって……。

 


・収録話数

 


・初出

 書き下ろし

 


・刊行情報

ひかりをすくう(光文社)

2006年7月21日

 

ひかりをすくう(光文社文庫)

2009年6月11日

 


・読了日

 


・読了媒体

 ひかりをすくう(光文社)

 


・感想メモ

この本のあらすじをAmazonで見たとき、暗そうな話だと思いました。主人公はパニック障害が元で仕事を辞めてしまいます。(パニック症状の人が知り合いにもいて、突然倒れてしまったり、発熱が続いたりと大変なようでした)いくら橋本紡といっても、ほのぼのとした世界観、本人曰く「地味な日常の話」を書けるのかなどと思っていました。

 

 

でも、読んでみればそんな心配は不要なようで、まさしく著者の世界観でした。ほんとに何も起こりません。人の人生の少しの部分、少しであるけど何かが変わった部分。そんな少しの期間をくり抜いたような小説です。

 


主人公に病気を理解して近くに居てくれる人がいてくれたことは、幸せなことなんだろうと思いました。こんなときに誰もいてくれなくて、しかも仕事にも大きな支障が出てしまって、もしかしたら辞めなくてはならないかもしれない。一人だったらそれこそ医者の言うように鬱病に発展してしまったかも知れません。

 


僕は「ひかりをすくう」という題は、誰かを「救う」話なのだと、読む前に勝手に決めつけてしまっていました。それが、読み終わった後では、「光」を「掬う」ことなのだと分かりました。仕事にもやりがいはあったでしょうし、続けたかったでしょう、それでも仕事を辞めて、日々を楽しく過ごすことを決めたのです。

 


学校や会社をさぼりたくなります。誰でも。そこでさぼって、見慣れない世界をみてもいい。それも楽しそうですけど著者はそういうことを言いたいんじゃない。健常者にとっては、普段いる場所こそが日常、「ひかりをすくう」場所なのだと筆者は言いたいのだと解釈しました。(2008.10.11)