小説とか漫画とか映画とか創作とか日記とか

キッチン /吉本ばなな

・形式

小説、短篇

 


・あらすじ

私がこの世でいちばん好きな場所は台所だと思う。祖母の死、突然の奇妙な同居、不自然であり、自然な日常を、まっすぐな感覚で受けとめ人が死ぬことそして生きることを、世界が不思議な調和にみちていることを、淋しさと優しさの交錯の中であなたに語りかけ、国境も時もこえて読みつがれるロング・ベストセラー、待望の定本決定版。“吉本ばなな"のすべてはここから始まった。

 


・収録話数

 


・初出

 海燕、1987年11月号

 


・刊行情報

キッチン(福武書店)

1988年1月30日

 

キッチン(福武文庫)

1991年10月

 

キッチン(角川文庫)

1998年6月

 

キッチン(新潮文庫)

2002年7月

 


・受賞歴、ランキング

第6回海燕新人文学賞

 

大庭みな子

 

富岡多恵子

 

中村真一郎

 

古井由吉

 

三浦哲郎

 


・読了日

 


・読了媒体

 キッチン(福武文庫)

 


・感想メモ

 

「キッチン」と「流れ星が消えないうちに」の彼女たちはどこで眠る。 

 

「キッチン」の主人公のみかげは最後の家族である祖母亡き後、台所で寝るようになります。これは彼女が台所が好きだということもあるのですが、なにより寝にくいところからだんだんと逃げていくうちに、台所の冷蔵庫の脇が一番よく眠れることに気が付いたからなのです。

 


流れ星が消えないうちに」の主人公、奈緒子は玄関でしか寝られなくなってしまいます。自室でも、妹の部屋でも眠ることができなくなり、しまいには玄関に蒲団を敷くのです。玄関とは人が立ち止まらない場所。そこに立ち止まっている奈緒子は生活の流れに逆らっているのです。以前僕は玄関でしか眠れなくなってしまった奈緒子のことを、成長していく中での苦しさと哀しさを表したものだと考えたわけですが、みかげはどうなのでしょうか。

 


彼女は若くして両親を、次に祖父を、そして祖母を失います。身近な人の死を続けて経験したみかげは、最初の1ページにして、

 

「いつか死ぬ時がきたら、台所で息絶えたい」

 

などと考えてしまっているのです。みかげ(=御影)の名前の通りの考え方です。

 

台所と食べ物について


解説で曾根博義さんの言うとおり、『「台所」が、まず「食事をつくる場所」』なのです。そして、みかげは「台所の冷蔵庫のわき」が一番寝やすいことに気が付きます。台所は食事をつくる場所です。冷蔵庫は食品を貯めておく場所です。みかげは呆然とする中で、死を考えながらも、生きていくことを強く意識していたのではないでしょうか。

 


その後、物語が進むにつれて多くの食べ物が出てきます。僕が着目したのは、みかげが雄一にカツ丼を届けるシーンです。

 


ここで、雄一は
「どうして君とものを食うと、こんなにおいしいのかな。」
と、尋ねます。
みかげはふざけて答えますが、
雄一は自分で
「きっと、家族だからだよ。」
と答えます。

 


彼らにとって食べ物をおいしく感じるというのは、お互いに一緒に生きていきたい(そして一緒に食べていきたい)ということを表していると思います。つまり、この小説は暗いだけではなく前を向いて歩いて行こうとする姿を描いた小説なのです。(2008.10.03)