小説とか漫画とか映画とか創作とか日記とか

蝶々の纏足 /山田詠美

・形式

 小説、短篇

 


・あらすじ

私の心を束縛し、私の自由を許さない美しき親友のえり子。その支配から逃れるため、私は麦生を愛し、彼の肉体を知ることで、少女期からの飛翔を遂げる。

 


・収録話数

 


・初出

文藝、1986年12月号

 


・刊行情報

蝶々の纏足(河出書房新社)

1987年1月

 

蝶々の纏足(河出文庫)

1987年8月

 

蝶々の纏足・風葬の教室(新潮文庫)

1997年2月28日

 


・受賞歴、ランキング

第96回芥川龍之介賞候補(文藝春秋、1987年3月号)

 

遠藤周作

 

開高健◎  

「この人にはストーリーらしいストーリーを作ろうという強い意識があって“作文”ではないという一点。ひょっとすると“悪達者”と評されるかもしれない達者さという一点。この二点で私は買いに出た。」

 

田久保英夫△ 

「にわかに別れる終章の説明部分は、急ぎすぎた。ここで、もう一人の少女の結婚のような関係と時間の飛躍もあり、やはり肝心なところに肉づけが足りない。」

 

古井由吉

 

三浦哲郎△ 

「力作だが、新しい発見も驚きもなかった。筆力は充分なのだが、作者のよさが素直に出ていないのは素材のせいだろうか。作者はこの素材にあまり気乗りがしなかったのではないか。それとも、逆に、取って置きだったからつい固くなったのか。」


水上勉△

「三度目の候補だがこの作が山田さんの仕事でいちばん低い、と思えた。才能は抜群で、しゃれた云いまわしもあって読ませるものの後半がつまらない。」

 

安岡章太郎


吉行淳之介△  

「前回の選評で「才能があることはたしかだが、その質について判断がつきかねるところがある」と書いたが、私としてはその言葉をそのまま次回に持ち越すことになった。」



・読了日

 


・読了媒体

 蝶々の纏足・風葬の教室(新潮文庫)

 


・感想メモ(※内容についての記述有り)

 


「十六にして、私、人生を知り尽くした。そんな筈、ないけど、とにかくそう思いこんだ。」


この小説はそんな一文で始まります。

 


主人公の瞳美(私)は、五歳のときに引っ越します。そこで、同い年のえり子と出会います。彼女は、一見ワガママというか高飛車に思え、そして強烈な支配欲を持つ少女だったのです。とにかく周りのものすべてを自分の引き立て役にしているようだと、瞳美は思います。

 


いくら幼いとはいっても、そんなえり子に好感を持つはずもなく、瞳美は小学校に通い始める頃から彼女のことを醒めた目で見るようになります。確かに発言を見るとなかなか厳しいものが多いです。仲の良さを確かめるようなものも多いのですが、それにしたって、わざわざ尋ねるというのは二人の仲が裂かれそうになっているという意識でもあったのでしょうか。

 


様々なエピソードを経て、二人は同じ高校に進学します。えり子が瞳美をそばに置いておきたいと思ったからの行動なのかもしれません。

 


そこで、瞳美はえり子よりも先に彼をつくります。これは瞳美が絶対しようとこだわっていたことでした。勿論、えり子は「抜け駆けはしないで」といったようなことを伝えるのですが、これに反抗的な瞳美は聞き入れず、えり子を失望させ、そして二人の仲は静かに、しかし決定的に決別するのでした。

 

蛇と小鳥、どっちがどっち?

 


二人が家の前を流れる小川のほとりで遊んでいるとき、蛇の死骸が流れてきました。小鳥を飲み込もうとして、失敗したらしく、蛇の腹は膨らみそして割け、くちばしと羽が覗いています。それを見て、瞳美はこう呟きます

 

「大き過ぎるものを呑み込もうとするからよ」

 

これは、瞳美はえり子の引き立て役、側に置いておくだけの存在としては不適当で、結局は仲違いしてしまった。そんなふうに読むのでしょうか。

 


しかし、ときに残酷な一面を見せつつも、瞳美を庇うような素振りも見せていたえり子。それを「蛇」に喩えるのでしょうか。このとき、えり子のそんな様子は、淋しさの裏返しと読むのかもしれません。瞳美が離れていく中で、実は彼女はとっても優しいんだよって。

 


最後のシーン、二人の仲の良さを示しているものだと信じています。(2008.09.30)