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初恋 /イワン・ツルゲーネフ

・形式

小説、中篇

 


・あらすじ

年上の令嬢ジナイーダに生れて初めての恋をした16歳のウラジミール――深い憂愁を漂わせて語られる、青春時代の甘美な恋の追憶。

 


・収録話数

 


・初出

読書文庫、1860年

 


・刊行情報

 

 


・翻訳者

神西清

 


・読了日

2008年7月25日

 


・読了媒体

はつ恋(新潮文庫)

 


・感想メモ

※ネタバレ有一部反転。

 

本作の主人公ウラジミールは滞在中の別荘の隣に引っ越してきた令嬢ジナイーダに恋心を抱くようになり、ことある事に彼女の家に行っては彼女に会おうとする。しかし、彼女は到底おしとやかなどという言葉は似合わない人物なのである。若年にして数人の男性、しかも同年代だけでなく、年上の男性も侍らせてしまう、高飛車というか、少しばかり気の強い人物なのである。

 


ある時ウラジミールはジナイーダに恋人が出来たと聞き、その人物が果たしていなかる人物なのかを確かめようと庭に隠れ、その人物の顔を見ようとする。何者かが近づいて来て顔を盗み見たら、なんと父親!あまりにもひどい、というかかわいそう。

 


誰にも支配されないとウソぶいていた少女が、主人公に他人行儀で高雅な父親に身も心も囚われ、初めて支配されてしまう。そんな現実を直視した主人公の強さには感服させられる。それと同時にこのとても残酷な展開に哀しみを覚えられずにはいられない。誰にも支配されないと言った強気で奔放な少女が、恋の前ではウラジミールの傲慢な父親に屈服し鞭で打たれてしまう。

 


哀しいのは何もそれだけではない。この小説がウラジミールによって語られる「追憶」であることもそうである。追憶、つまりは思い出や記憶の彼方にあるものであり、現在進行系ではないと著者は最初から言っていたのである。であれば「初恋」という題は、ウラジミール→ジナイーダであると同時に、ジナイーダ→ウラジミールの父親であるかもしれないと気付くと、もうやるせない。(2008.08.06)