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少女には向かない職業 /桜庭一樹

・形式

小説、長篇、サスペンス

 


・あらすじ

あたし、大西葵13歳は、人をふたり殺した…あたしはもうだめ。ぜんぜんだめ。少女の魂は殺人に向かない。誰か最初にそう教えてくれたらよかったのに。だけどあの夏はたまたま、あたしの近くにいたのは、あいつだけだったから―。これは、ふたりの少女の凄絶な“闘い”の記録。『赤朽葉家の伝説』の俊英が、過酷な運命に翻弄される少女の姿を鮮烈に描いて話題を呼んだ傑作。

 

山口県の小さな離島の中学校に通う中学2年生・大西 葵は、クラスでは明るく友達もそこそこいる、ごく普通の少女だ。しかし家に帰れば、無職で毎日酒ばかり飲んでいる義父と、仕事で疲れて帰ってきては愚痴をこぼす母親との暮らしに苦しんでいた。学校では友達にそんな悩みを打ち明けることもできず、明るく振舞うことしかできない日々が続いていた。
やがて学校は夏休みに入った。その初日、葵は互いにゲーム好きな男友達・田中 颯太と、下関市にあるゲームセンターへ遊びに出かける。彼と別れ家に帰る途中、葵は島で迷い山羊を見つける。山羊の姿に自分の境遇を重ねた葵は、無性に怒りを覚え理由も無く山羊を殴り、痛めつけた。その時「…それぐらいにしておいてやりなよ」と声がした。振り返ると、同じクラスの女子・宮乃下 静香がそこにいた。普段はクラスでも目立たない静香だったが、葵はその時彼女の異様な存在感に気づく。静香は「今、港で水死体が見つかったから見に行かない?」と葵を誘う。
こうして、葵と静香、2人の奇妙な関係が始まった。

 


・収録話数

 


・初出

書き下ろし

 


・刊行情報

少女には向かない職業(東京創元社)

2005年9月

 

少女には向かない職業(創元推理文庫)

2007年12月23日

 

 

・読了日

2008年6月9日

 


・読了媒体

少女には向かない職業(創元推理文庫)

 


・感想メモ

※ネタバレ有一部反転。

 

中学2年生の1年間で、あたし、大西葵13歳は、人をふたり殺した。その一文で始まる文章は何とも言いにくい。殺人は悪いことであるだろうからです。しかしこの少女は13歳でありながら人を二人も殺したというのです。

 


一人目の犠牲者は少女の父親です。無職であり、またアルコール中毒であり酒を手放さない義父からは家庭内暴力に遭い、親であるより、女であることを優先する母には重荷に思われています。そのような崩壊寸前の家庭で少女は迷い、殺人を恐れ、恐怖に戦きながらも、友人の助け(というか誘い)を得て父親を間接的にしかし実際に殺すのです。

 


殺すのです、などということは文字にすればわずかこれだけのことですが、そこに伴う苦悩や後悔は想像もつきません。むしろつきたくない。それなのに少女からはそれをあまり感じることができません。そう読んだ直後に思いました。でも読んでから時間が経ってくると本当にそうなんだろうかと疑問も浮かんできます。少女は感じていないというわけではないし、実際にその問題を口にもしています。

 

 


本作の軽さ、それは読みやすい反面深刻さを薄くします。しかしその軽さが反対に、純粋な怖さというか狂気さをも表しているのではないかとも思えてくるのです。(2008.08.06)