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雪沼とその周辺 /堀江敏幸

・形式

 小説、連作短篇集

 


・あらすじ

堀江敏幸 『雪沼とその周辺』 | 新潮社

 小さなレコード店や製函工場で、時代の波に取り残されてなお、使い慣れた旧式の道具たちと血を通わすようにして生きる雪沼の人々。廃業の日、無人のボウリング場にひょっこり現れたカップルに、最後のゲームをプレゼントしようと思い立つ店主を描く佳品「スタンス・ドット」をはじめ、山あいの寂びた町の日々の移ろいのなかに、それぞれの人生の甘苦を映しだす川端賞・谷崎賞受賞の傑作連作小説。

 


・収録話数

スタンス・ドット

イラクサの庭

河岸段丘

送り火

レンガを積む

ピラニア

緩斜面

 


・初出

 スタンス・ドット、新潮、2002年1月号

 


・刊行情報

雪沼とその周辺(新潮社)

2003年11月

 

雪沼とその周辺(新潮文庫)

2007年7月30日

 


・受賞歴、ランキング

第40回谷崎潤一郎賞(『雪沼とその周辺』中央公論、2004年11月号)

 

池澤夏樹

 

井上ひさし

 

河野多恵子

 

筒井康隆

 

丸谷才一


第8回木山捷平文学賞(『雪沼とその周辺』)

 

秋山駿

 

川村湊

 

三浦哲郎

 

第29回川端康成文学賞(「スタンス・ドット」新潮、2003年6月号)

 

秋山駿

 

井上ひさし

 

小川国夫

 

津島佑子

 

村田喜代子

 


・読了日

 2008年1月10日

 


・読了媒体

 雪沼とその周辺(新潮文庫)

 


・感想メモ

本作の登場人物は、いずれも老いを隠せなくなってきた人物ばかりである。長い人生を送ってきた中で、辛い過去を経験し哀愁を感じさせる人物ばかりなのである。かといって、みすぼらしいとか、読んでいて哀しくなってくるというわけでもない。彼らは過去を抱えながらも一様に前に進もうと奮闘している。

 


その舞台は都会ではなく、その逆に都会から忘れられていそうな、スキー場も潰れてしまったような「雪沼」である。人々が過労を極めた一番目の人生を終えた後、二番目の人生の舞台として選ばれるのが、この自然と人々の優しさにも恵まれた人情味ある町なのだ。

 


そのような町にやって来た、もしくは定住してきた彼らの性格がひねくれているはずもない。彼らの見習うべきともいえるような穏和さがこの作品の最大の魅力である。

 


本作の中ではこれといった事件が起きるわけではない。日常の一ページといった風景、生活の話であり、静かであり穏やかであり、それを通り越して地味だとも思える。このような小説は時として、「何を言いたいのか分からない」、「意味不明」、「だらだらと続いて全くおもしろくない」などと中傷されてしまうのが、常である。それが、本作ではそんなこともなくただ日常を楽しめるというのが、読者からすれば素直に嬉しく同時に作者の筆力を感じさせるものとなっている。 (2008.08.05)