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クビキリサイクル 青色サヴァンと戯言遣い /西尾維新

・形式

 小説、長篇、ミステリ

 


・あらすじ

自分ではない他人を愛するというのは一種の才能だ。他のあらゆる才能と同様、なければそれまでの話だし、たとえあっても使わなければ話にならない。嘘や偽り、そういった言葉の示す意味が皆目見当つかないほどの誠実な正直者、つまりこのぼくは、4月、友人玖渚友に付き添う形で、財閥令嬢が住まう絶海の孤島を訪れた。けれど、あろうことかその島に招かれていたのは、ぼくなど足下どころか靴の裏にさえ及ばないほど、それぞれの専門分野に突出した天才ばかりで、ぼくはそして、やがて起きた殺人事件を通じ、才能なる概念の重量を思い知ることになる。まあ、これも言ってみただけの戯言なんだけれど――第23回メフィスト賞受賞作

 


絶海の孤島に隠れ棲む財閥令嬢が“科学・絵画・料理・占術・工学”、五人の「天才」女性を招待した瞬間、“孤島×密室×首なし死体”の連鎖がスタートする。工学の天才美少女、「青色サヴァン」こと玖渚友とその冴えない友人、「戯言遣い」いーちゃんは、「天才」の凶行を“証明終了”できるのか?第23回メフィスト賞受賞作。

 


・収録話数

 


・初出

 書き下ろし

 


・刊行情報

クビキリサイクル 青色サヴァンと戯言遣い(講談社ノベルス)

2002年2月5日

 

クビキリサイクル 青色サヴァンと戯言遣い(講談社文庫)

2008年4月15日

 


・受賞歴、ランキング

 第23回メフィスト賞

 


・読了日

 2008年7月24日

 


・読了媒体

 クビキリサイクル 青色サヴァンと戯言遣い(講談社ノベルス)

 


・感想メモ

天才とはどんな人物だろうかと考えると、作中の「遠い人」という比喩は的確であり言い得て妙。天才とは勿論その人の得意とする分野において格別な能力を発揮したり、もしくは「完璧超人」といえるような、どんな物事に対しても万能である人のことであり、そのために常識が欠如していたり性格がひねくれていたりする、というのが僕たちの持つ天才のイメージです。

 


本作に登場する天才達も、そのイメージの枠から漏れず、一癖もふた癖もある人物ばかりです。自分を「僕様ちゃん」と呼ぶ工学の天才少女、玖渚友、は傍若無人の振る舞いであるし、占術の天才、姫菜真姫はことあるごとに主人公に突っかかり、科学の天才、園山赤音はちょくちょく日本語を間違えます。

 


本作の舞台は、財閥令嬢が住む絶海の孤島です。そこで、首切り殺人が発生します。その後には、密室の中で二度目の首切り殺人が発生します。孤島、密室、首なし死体、というミステリーの王道とも言える状況を作りだし、主人公と読者はその謎に取り組むことになります。

 


ミステリーの王道に挑戦するにあたって、筆者の誤魔化しや手抜きといったものは見られません。シンプルと言うかありがちな状況故にトリックは高度になってしまいます。それ故に読者は、一見浅そうであり簡単に解けてしまいそうな謎がページを捲れば捲るほど、自分の予想の範疇から遠ざかっていくことに、悔しさを覚えながらも真相を知った快感に酔いしれることができます。警察や科学捜査のない環境でのみの話ではありますが、それはこの場合(孤島=クローズドサークル)では大した問題でもないと思います。

 

 

ミステリーの王道に挑戦しているのにも関わらず、「僕様ちゃん」という一人称のヒロインに対して違和感を覚えるというのも、人類最強や人類最悪といった大袈裟な表現に首をひねってしまったというところは分かります。でもこれが西尾維新の小説なのだと言えるでしょう。 (2008.07.26)