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星々の舟 /村山由佳

・形式

小説、長篇

 


・あらすじ

禁断の恋に悩む兄妹、他人の男ばかり好きになる末っ子、居場所を探す団塊世代の長兄、そして父は戦争の傷痕を抱いて―愛とは、家族とはなにか。こころふるえる感動の物語。

 


・収録話数

全六章

あとがき

 


・初出

別册文藝春秋、2002年1月号~11月号(全6回)

 


・刊行情報

星々の舟 Voyage Through Stars(文藝春秋)

2003年3月30日

 

星々の舟 Voyage Through Stars(文春文庫)

2006年1月10日

 


・受賞歴、ランキング

第129回直木三十五賞(オール讀物、2003年9月号)

 

阿刀田高◎ 

「描かれている一族はありふれた庶民であり、特別な設定はなにもない。大げさな言いかたが許されるならば、エミール・ゾラの〈ルーゴン・マツカール〉を髣髴するものがあった。小さな傷がないでもないが、現代小説の典型として絶大な拍手を送りたい。」

 

五木寛之○  

「大きな破綻のある小説である。しかし、小器用にまとまった熱気のない作品など、読んだところで仕方がないではないか。書き手が全体の構成を崩してでも書かずにいられない何かに、私は胸を打たれるのだ。『星々の舟』には、それがあった。」

 

井上ひさし◎  

「〈限りなく一人称に近い三人称による多視点〉という語りをさりげなく駆使しながら、家族という運命共同体の罪深さ、その懐かしさを、明確でしなやかで滋味にあふれた文章でみごとに書き切った。」

 

北方謙三○

「ごく普通の、人としての営為にすぎないが、生きることの意味を読者に問いかけるところにまで昇華されている、と私は感じた。誠実な筆遣いも、選考委員の心を動かしたと思う。」

 

田辺聖子○

「人物の一人一人の存在感が重層的に影を落し、得もいえぬハーモニイを生む。」

 

津本陽△ 

「作者の力量に見るべきものがあるが、いろいろと複雑に内容を組みあわせており、そうなるとまだ筆の若さがめだってきて、簡単に引きこまれるというわけにはゆかなくなった。たとえていえば、果物籠に果物を盛りすぎたような不安定感があった。」

 

林真理子△ 

「この方の初期のものから読んでいるが、いつのまにかこれほど大人の作家としての技倆を身につけられ、堂々とした大作だ。けれども最後の章は、いかにも勉強しました、という意気込みだけで、かなり気持ちをそがれてしまった。」

 

平岩弓枝◎  

「凄いところは一人の人物を描くことから、まるでつながっている糸をひき出すように一つの家族の人々が各々、主人公となって浮び上って来る構成力の巧みさと適確な人間像の描写力だろうと思う。小説というものの魅力と怖しさを久しぶりに堪能させられた。」


宮城谷昌光△  

「その成長が賛嘆されての受賞である、と私は理解した。」

 

渡辺淳一○  

「部分的には、一部、文章の不自然さや、冗長になりがちなところなど、やや問題はあるが、ともかくこれだけのものを書ききった、努力と力強さに感服した。この作家がこの一作で、大きな壁を突き破ったことは、間違いないだろう。」



・読了日

2008年4月1日

 


・読了媒体

星々の舟 Voyage Through Stars(文藝春秋)

 


・感想メモ

本作に紡がれている物語は、今までの『天使の卵』や『おいしいコーヒーのいれ方シリーズ』に代表されるような「全力で恋愛してます!」といったようなものではありません。主人公の年齢もこれまでは、十代後半から、二十代の半ばであったのが、三十代の半ばや五十代と世代が変わっています。(女子高生も出てきますが)でも書かれているのは恋愛です。

 


最後の章を除く作品全体に漂っているのは、寂寥感、孤独感というものでしょうか。中心に描かれている、貢、暁、沙恵、美希の四兄弟はいずれも、「独りぼっち」なのです。「恋愛小説なのになぜ独りぼっち?」という疑問を抱く方も多いでしょうが、彼らがしている恋愛とは実らないものなのです。

 


村山由佳らしく、内面の描写に優れた小説であるのですが、読むのが前述の作品と比べて辛かった。けれどおもしろかった。物語が一貫して続いていないような印象も抱きましたが、それを補って余りある苦さとおもしろさを持っている小説でした。(2008.04.01)