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半分の月がのぼる空 /橋本紡

・形式

小説、恋愛、ボーイ・ミーツ・ガール

 


・あらすじ

永遠の青春小説、ここに再び!

17歳の裕一は入院先の病院で本好きの絶世の美少女里香に出会う。世界一ワガママな彼女は難病を抱えていた。メディアミックスも話題となった大人気のシリーズ第一巻。
これは、男の子と女の子が出会う、普通の話。だけど、僕たちにとっては本当に本当に特別なことだった――。肝炎で入院中の高校生・戎崎裕一はエロ本集めが趣味の多田さんや元ヤンキーの看護師・亜希子さんに翻弄される日々のなか、同い年の秋庭里香に出会う。人形のように美しく本を愛する文学少女、そして女王様のようにワガママである彼女は、難しい病気をかかえていた。彼女にふりまわされながらも裕一は恋におちていく――。

 

肝炎を患って入院した戎崎裕一は、退屈な入院生活に耐えかねて夜な夜な病院を抜け出しては、看護師の谷崎亜希子に怒られる日々を送っていた。そんなある日、裕一は抜け出しの黙認と引き換えに、同じ病院に入院していた秋庭里香の話し相手になる取引を亜希子と結ぶ。
二人の距離は少しずつ近づいてゆき、里香はほとんど誰にも見せなかった笑顔を裕一に見せるようになる。ある日、里香は「自分が心臓の病気を患っており、もうすぐ死ぬ運命にあること」を裕一に告げる。裕一は戸惑いながらも、自分が里香を意識し始めていることに気づく。
里香と二人で病院を脱走して訪れた「里香の思い出の地、砲台山」で、裕一は知る。里香は、もはや生きる希望を失っている事を。そして里香もまた、知る事になる。裕一の想いを。その想いを知った時、里香は再び生きる希望を取り戻し始める。病院や高校、伊勢の町を舞台に、里香、亜希子、主治医の夏目といった、彼を取り巻く人々との関わりを含め、物語は進んでゆく……。

 


・収録話数

 


・初出

 


・読了日

2008年2月18日

 


・読了媒体

半分の月がのぼる空(電撃文庫)

 


・感想メモ

急性肝炎で入院を余儀なくされた主人公、戎崎裕一は変化の乏しい入院生活に退屈し、夜な夜な病院を抜け出しては、看護士の谷崎亜希子に説教をされるという毎日を過ごしていた。そんな中、秋庭里香に出会う。

 


言い方は悪いが、そんなありきたりな、使い古されたお話である。著者もそれも認め、第1巻のプロローグで「ごく普通の話だ。」と断っている。けれど普通の話だと認めることで、「2人にとっては特別なことだ」ということを強調できているのは、上手い。

 


舞台は、三重県伊勢市。伊勢神宮で有名な町だ。その町にある、三階建ての小さな病院で裕一は多くの人と出会う。

 


有名な町だが、近くにある商店街は(実際はそれほどでもないらしいのだが)死にかけていた。著者は、裕一がそんな商店街に寂寥の思いを抱いているシーンを作品の冒頭に持ってくることによって、この物悲しいこの世界に読者を引き込んでいる。

 


裕一は17歳。情けないというか、はっきりしない。けれど、高校生らしくやるときはやる。よく主人公は万能すぎたり、逆に個性的な脇役達によって目立たないことが多い。特に思春期である場合には、正義感をやたらに振り回しすぎてしまったり、あまり意味もなく暗かったりするのだが、本作の著者は、個性的ながらもその個性が不自然ではない登場人物を多用し、また周辺の環境を裕一に説明させることによって、裕一という主人公を自然な存在に形成することに成功している。その正直でも、くどすぎない性格に読者は共感することができる。(2008.02.18)