小説とか漫画とか映画とか創作とか日記とか

MISSING /本多孝好

・形式

小説、短篇集

 


・あらすじ

もういない、大切な人へ

彼女と会ったとき、誰かに似ていると思った。
何のことはない。その顔は、幼い頃の私と同じ顔なのだ。

生徒に対して距離をとって接する私が、彼女にだけ近づいたのは
自然な流れだった――。

夜の海辺で、恋人と過ごした日々を回想する私。
だがその裏には、これまで見えていなかった真実が
息を潜めていた。(「眠りの海」)

「このミステリーがすごい!2000年版」第10位!
小説推理新人賞受賞作「眠りの海」を収録。

透明感溢れる哀切と驚きにみちた、デビュー短編集。

 


・収録話数

「眠りの海」
「祈灯」
「蝉の証」
「瑠璃」
「彼の棲む場所」

 


・初出

「眠りの海」    小説推理、1994年8月号
「祈灯」      小説推理、1995年4月号
「蝉の証」     小説推理、1996年1月号
「瑠璃」      小説推理、1997年9月号
「彼の棲む場所」  小説推理、1998年4月号

 


・受賞歴、ランキング

第16回小説推理新人賞受賞「眠りの海」

 


「このミステリーがすごい!2000年版」第10位

 


・読了日

 


・読了媒体

MISSING(双葉文庫)

 


・感想メモ

※ネタバレ有一部反転。

 

何とも親近感あふれる小説である。だがテーマはとても重い。生徒と教師の恋、無理心中、自殺、死んだ妹になってしまった姉、孫に金を奪われる祖母、結婚詐欺、不倫、同級生を殺したいという衝動に駆られる高校生。

 


本作はそんな多くのテーマを扱った5作の短編集である。

 


そんな5作に共通しているのは「死」というテーマを扱っているという一点である。それもただの死ではない、死をもって自分の存在を他人の心の中に半永久的に残そうとしたがゆえの死なのだ。残された人は、さきに見える自分の全生涯を「自分が殺してしまったのだ(あるいはその人が死んだのに)」という、これ以上にないほど深い負い目と一緒に生きていかなければならない。この晴れることのない罪悪感は、しだいに重みをまして絶対的な存在感となって心の中に君臨するだろう。その前ではどんな言い訳も通用しない。ひれ伏すしかないのだ。そして、自らに死が訪れる瞬間を待つしかない。実際には自分で自分の人生に幕を下ろしてしまう人もいるだが…。

 


ただ、これだけの重いテーマなのにもかかわらず読後は非常に爽やかだ。皆が心情を素直に吐き出しているからに違いないのだが、なにより小説の世界と読者とが近いのだ。死はそんなに軽いものではないと言われると否定できないのも事実ではあるが、人間の弱みをを鋭くついた作品であるということも事実である。


それにしても登場人物を殺しすぎではないか?「実際には自分で自分の人生に幕を下ろしてしまう人もいるのだが…。」とは前に書いたが、(「彼の住む場所」のような戦いではなく)苦しみと戦う強さも見てみたかった。(2008.02.09)