小説とか漫画とか映画とか創作とか日記とか

壁―S・カルマ氏の犯罪 /安部公房

・形式

小説、中篇

 


・あらすじ

ある朝、突然自分の名前を喪失してしまった男。以来彼は慣習に塗り固められた現実での存在権を失った。自らの帰属すべき場所を持たぬ彼の眼には、現実が奇怪な不条理の塊とうつる。他人との接触に支障を来たし、マネキン人形やラクダに奇妙な愛情を抱く。そして……。独特の寓意とユーモアで、孤独な人間の実存的体験を描き、その底に価値逆転の方向を探った芥川賞受賞の野心作。

 


・初出

近代文学、1951年2月号

 


・受賞歴、ランキング

第25回芥川龍之介賞(文藝春秋、1951年10月号)

 

宇野浩二×

「不可解な小説である。しかし、退屈をしのび、辛抱して、しまいまで、読めば、作者が書こうとしたことは、少し(少しであるが)わかる。一と口にいうと、『壁』は、物ありげに見えて、何にもない、バカげたところさえある小説である。」

 

川端康成◎

「私は推薦したかった。堀田氏や安部氏のような作家が出て「歯車」や「壁」のような作品の現われることに、私は今日の必然を感じ、その意味での興味を持つからである。」

 

岸田國士△

「注目すべき野心作にはちがいないが、もうちょっと彫琢されてあることが望ましいものであった。序に言えば、この作家の言葉遣いには、腑におちぬ日本語の誤りが眼についた。」

 

坂口安吾×

「今回当選の二作は私は感心しませんでした。」

 

佐藤春夫△

「鴎外訳のロシヤ小説の模倣ではあろうともその意図と文体の新鮮なだけでもよかろうというと、別に瀧井君なども同意見であったが安部公房は既に別の賞金を貰った人ではあり、彼一人では後塵を拝する観があって面白くないと云う説もあって、石川・安部と二人を組み合した授賞になった。」

 

瀧井孝作◎

「文体文章がちゃんと確かりしているから、どんな事が書いてあっても、読ませるので、筆に力があるのです。自分のスタイルを持っている。これはよい作家だと思いました。」

 

丹羽文雄〇

「寓意とか諷刺をことさら期待せずに、最後まで面白くよんだ。一つの才能。こういう風にも書けるものだと感心した。二十六歳というのに、堂々と腰を据えた文章はみごとである。」


舟橋聖一△

「新しい観念的な文章に特徴があり、実証精神の否定を構図とする抽象主義の芸術作品である。よく、力を統一して、書きこなしている。難をいえば、二〇六枚は長すぎるのではないかと思う。途中で飽きてくるところがあり、散漫になる。」

 


・読了日

初読日不明

 


・読了媒体

壁(新潮文庫)

 


・感想メモ