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死者の奢り /大江健三郎

・形式

小説、短篇

 


・あらすじ

屍体処理室の水槽に浮き沈みする死骸群に託した屈折ある抒情。

 

 

・初出

文學界、1957年8月号

 

 

・刊行情報

死者の奢り(文藝春秋)

1958年

 

死者の奢り・飼育(新潮文庫)

1959年9月25日

 


・受賞歴、ランキング

第38回芥川龍之介賞候補(文藝春秋、1958年3月号)

石川達三×

「「死者の奢り」を推した人も少くなかったが私は納得できないものがあった。死体の不気味な描写がいくら書かれても、それは小説にはならない。」

 

井上靖◎

「本当の意味で小説の面白さというものは、「死者の奢り」の方にあって、またその面白さの質や才能の質が上等ではないかと思ったからである。」

 

宇野浩二△

「話は、死体処理室の管理人と女子学生とをうまく使って、異様のように作られている所は、なかなか人を喰った様な所もあるけれど、人間と言うものが殆んど書かれていない。それに、この小説の欠点は、抽象的であることだ。」

 

川端康成◎

「異常な題材を、意識して書いているので、行き過ぎの欠点と、私たちに感じられる個所が少くないのは当然である。それでも、この二作に見る才能はあざやかである。」

 

佐藤春夫△

「正しく読むに足る作品で作者の才気は十分見えている。しかしその衒気と匠気とは僕をして顔をそむけさせる。好んで奇異嫌悪の題材を採ったのにも何らの必然性は認めにくいから読者の好奇心を釣ろうとするかとしか見えない。「死者の奢り」という題の気取りも嫌味である。要するに僕はこの作者の才能を認めながらそれに多少の反感を持つのを否むことができなかった。」

 

瀧井孝作×

「「死者の奢り」は、素直に描いてあるならば面白いが、この題名のように、むかむかする死体各々が何か曰くを云い相なのは、このユーモアは、若いキザで厭味ではないかしら。」

 

中村光夫△

「「死者の奢り」は若々しい才気は感じられても、作者が自分の若い嗜好に溺れたようなところがあり、氏が今後大きく伸びるにしても、氏の若書きであり、代表作にはなるまいと思われました。」

  

丹羽文雄○

「「死者の奢り」は、最後まで落すに惜しい作品であった。」

 

舟橋聖一◎

「「死者の奢り」は、頭抜けている。大江には、いい意味のデカダンスがあり、それが人生派の抵抗になったろうが、この程度のデカダンスなしには、新しいエネルギッシュな小説のスタイルは、進歩しない。」

 

 

・読了日

2015年9月8日

2017年4月23日

2017年8月29日

 


・読了媒体

死者の奢り・飼育(新潮文庫)

五十三刷

 


・感想メモ

「奇妙な仕事」では犬殺しのアルバイトだったが、今作ではそれが人間の死体を処理するアルバイトになった。とはいえ、作品の題材構造としては非常に似通っており、「奇妙な仕事」の加筆版ともいえる。作品は同じ短篇ながら長くなっており、とくに人間の死体の一種グロテスクな不気味なイメージが増している。それは大江の持つ死のイメージがより作品において前面に押し出されたからだろう。

 

「奇妙な仕事」の感傷的なイメージは今作にも引き継がれていて、それは女子学生の台詞や、主人公の死に対するイメージ、死は《物》なのだという感慨にも示されている。

 

登場する女性の妊娠や堕胎の設定はその後いくつかの小説で繰り返し登場するが、それは若き日の大江にとって性や生と死の問題を語るにもっとも適した形だったのだろうか?(2017.08.29)