小説とか漫画とか映画とか創作とか日記とか

去年の冬、きみと別れ /中村文則

・形式

小説、長篇、犯罪

 

 

・あらすじ

ライターの「僕」は、ある猟奇殺人事件の被告に面会に行く。彼は二人の女性を殺した罪で死刑判決を受けていた。だが、動機は不可解。事件の関係者も全員どこか歪んでいる。この異様さは何なのか? それは本当に殺人だったのか? 「僕」が真相に辿り着けないのは必然だった。なぜなら、この事件は実は――。話題騒然のベストセラー、遂に文庫化!

 


・初出

書き下ろし

 


・受賞歴、ランキング

2014年本屋大賞第10位

 


・読了日

2017年6月21日

 


・読了媒体

去年の冬、きみと別れ (幻冬舎文庫)

 


・感想メモ

本作は「僕」が書いた文章を編集者が加筆して『小説』として完成させた、という形のメタフィクションノベルである。あとがきの「こういう小説」はポストモダン小説だとも読め(先の11章に括弧がついていたり)、そのため文中の「僕」や「きみ」が誰なのかを丁寧に確認する必要がある。(親切にもp91の「きみは誰だ?」は太字だ)本作は「あなたが作った本が好き」と語る吉本亜希子(J・I、大切なきみ)の復讐のために、木原坂雄大(M・M、あの死刑になるカメラマン)に本という形で真相を知らせる役割を果たす。

 

仮名なのは、本作がノンフィクションであり(p40、p73)『小説』であるから(p190)だ。オルハン・パムクの「K」やカポーティが『冷血』取材時にレコーダーを使用しなかったことなど「色々仕掛け」かなと思うところはあるが、人称にこだわった作者が編集者の一人称を複数用いたこと(僕、私)はよく分からなかったし、理解のために複数回読む必要があるのは億劫だった。

 

最後に、作者の一風変わった恋愛小説の系譜として『去年の冬、きみと別れ』というタイトルはいいなと思いました。タイトルの「きみ」が誰かは分かりやすいし。(2017.06.21)