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銃 /中村文則

・形式

小説、長篇、犯罪

 

 

・あらすじ

「次は…人間を撃ちたいと思っているんでしょ?」
雨が降りしきる河原で大学生の西川が<出会った>動かなくなっていた男、その傍らに落ちていた黒い物体。圧倒的な美しさと存在感を持つ「銃」に魅せられた彼はやがて、「私はいつか拳銃を撃つ」という確信を持つようになるのだが……。TVで流れる事件のニュース、突然の刑事の訪問――次第に追いつめられて行く中、西川が下した決断とは?

「衝撃でした。より一層、僕が文学を好きになる契機になった小説」(又吉直樹氏)
「孤独は向かってくるのではない 帰ってくるのだ」(綾野剛氏)
他、絶賛の声続々! 新潮新人賞を受賞した、中村文則、衝撃のデビュー作。ベストセラー&大江賞受賞作『掏摸(スリ)』の原点がここに!


雨が降りしきる河原で大学生の西川が出会った動かなくなっていた男、その傍らに落ちていた黒い物体。圧倒的な美しさと存在感を持つ「銃」に魅せられた彼はやがて、「私はいつか拳銃を撃つ」という確信を持つようになるのだが…。TVで流れる事件のニュース、突然の刑事の訪問―次第に追いつめられて行く中、西川が下した決断とは?新潮新人賞を受賞した衝撃のデビュー作。

 


・初出

新潮、2002年11月号

 

 

・受賞歴、ランキング

第34回新潮新人賞(新潮、2002年11月号)

 

川上弘美

 

沼野充義

 

福田和也

 

保坂和志

 

町田康

 

 

第128回芥川龍之介賞候補(文藝春秋、2003年3月号)

 

池澤夏樹×

「銃というものを持つことによる偽の自信について普通に想像できる筋道をなぞっただけ。本当はこの先でもう一つ逸脱が欲しいのだ。」

 

 石原慎太郎〇

「候補作の中で唯一つ最後まで面白く読んだ。非日常性の象徴ともいえる凶器によって主人公の生活に今まで存在しなかった、緊張と孤独さをともなった新しい生活のリズムのようなものが生まれてくる。ただ最後の、エンディングはいかにも通俗、ありきたりでしかない。」

 

黒井千次△

「翻訳調の文章が粗雑ではあるものの、拳銃を拾った若者の心理の変化を追い続ける粘りに結末まで引きずられた。刑事の描き方など欠点はあるが、書きたいことが咽喉まで詰まっている切迫感は伝わって来る。」

 

河野多恵子×

「拾った拳銃――あるいは盗んだことになるかもしれない拳銃を身近かにもつようになってからの主人公の意識・気分のあれこれは鮮やかに伝わってきて、そこには作者の資質が感じられた。」

 

高樹のぶ子〇

「これは銃に対する男の意識がテーマになっている。深読みすれば、核を持った人間の心理も想起させる。文章のドライブ感に才能を感じたのだが。」

 

古井由吉〇

「意識の構築物と呼ぶべき作品である。主人公の意識と無意識との境まで分け入りはする。ある段階での意識が破れかかると、不可解な行動が表われて、次の段階へ移る。そうやって踏みあがっていく足取りは感じ取れる。しかし読み了えて、力作には感じるが、全体として同じ「騒動」の繰り返しであったような印象を否めないのはどうしたことか。」

 

三浦哲郎×

「読みはじめてすぐカミユの「異邦人」という小説の冒頭を思い出した。途中で全く別種の作品だと気づいたが、それでも最後まで読み通したのは、作者の強引ともいえる筆力とまだ残っていた胸のときめきに引かれてのことである。何よりの不満は、その破滅の過程がすべて読者の予想の域を出なかったことである。」


宮本輝△

「最後まで読ませる力を持っている。一丁の拳銃がひとりの青年の思考や行動を魔物のように支配していくという筋立を中村氏独自の文学世界へと深めるには、銃を手にした主人公と、そうでないときの主人公とのあいだに、歴然とした断層が形成されなくてはならない。この作品にはそれがなかった。」

 

村上龍 

 

 

The Wall Street Journal The Best Mysteries of 2016

 


・読了日

2017年5月31日

 

 

・読了媒体

銃(河出文庫)

 

 

・感想メモ

銃は主人公の暴力性を表しているのだろう。その暴力性は自分に向けられても(自殺)、他人に向けられても(隣の部屋の親子)危険なものだ。主人公はおそらく他人にあまり興味がなく、そのためこの小説には「思った」「感じた」「考えた」「違いない」の表現が多く、視野狭窄を強調している。ラストで主人公は恢復したのかと思いきやすぐに一線を越えてしまったが、そのことから作者の、暴力性に対する問題意識の根の深さを感じた。(2017.05.31)

 

妙なエネルギーがある。生のエネルギーでもなく若さゆえのエネルギーでもない。だがそのエネルギーを身近に関られる人にとってこの小説と作者は貴重なものになりうる。(2017.10,22)